断片

2003年5月25日
取り立て

B「勘違いするな。貴様の魂に元々価値などない。それは紙の札と同じ。契約に基づき、正しく受け渡される事によってのみ意味を持つだけだ。」
 
A「まぁよしたまえ。こちらは専門家だ、先刻ご存知のことばかりさ。お分かりでしょう神父。あなたと子供達十五人分、確かに戴かねばならぬのですよ。約束は約束。魂を誤魔化したり値切るなんて、それこそ最も罪深い技ではありませんか。」

B「さぁ…話にならん。震えているのか。それにしてもどうしたことだ。日頃教壇から滑らかに聖句を上せていた口が今になって一句も放てないとは。」

A「今、暖炉の方をご覧になりましたか。思い出しました。異端狩の始まり以来、敬虔な信徒の屋敷は隠れ部屋を設けるのが常になったとか。左様…七畳ばかりに十五人が入れば些か息苦しい筈ですが…おやどうなさいました?震えが益々ひどい。暖炉の火が消えたままでは身体に毒ですな。」

B「そうだな。いや、結構。火口は要らぬ。そこをどいて貰おうか。」

A「これは私たちの親切と受け取って戴きたい」

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